浜名湖は静岡県西部を代表する釣りスポットですが、近年マナー違反や違法行為により釣り禁止エリアが増加しています。実際に舞阪港側や今切口の導流堤は釣り禁止になりました。
この記事では、初心者の方が安全・合法に浜名湖での釣りを楽しむために必要な情報を網羅的に解説します。
この記事で分かること
- 浜名湖で絶対にやってはいけないこと
- 違反した場合の罰金額と法的責任
- 基本的な釣りマナー
- 初心者が知っておくべきトラブル事例
- 施設ごとのルール
「知らなかった」では済まされません。浜名湖での釣りには厳格なルールがあり、違反すると最大3,000万円の罰金が科せられることもあります。
1. 絶対にやってはいけないこと(最重要)
1-1. 今切口周辺での釣りは完全禁止

今切口を中心に左右・沖合1,400メートルの範囲は釣り完全禁止です。堤防上も立入禁止区域になっているため、今切口の上を通る浜名バイパスから南側は釣り禁止と認識しましょう。
禁止理由:
- 潮流が非常に速く危険
- 大型船舶の往来が多い
- 過去に死亡事故が発生(平成23年)
罰則:
- 6ヶ月以下の懲役または10万円以下の罰金
今切口の北側にある導流堤(通称「大曲がり」)も関係者以外立入禁止です。湖内の航路上はプレジャーボートでの釣りも禁止協定により完全に禁止されています。
1-2. 特定の魚介類は絶対に採らない
以下の魚介類は一般の釣り人が採ることは完全に禁止されています。
対象 | 罰則 |
---|---|
アワビ | 3年以下の懲役または3,000万円以下の罰金 |
ナマコ | 3年以下の懲役または3,000万円以下の罰金 |
ウナギ稚魚(13cm以下) | 3年以下の懲役または3,000万円以下の罰金 |
ハマグリ(全面禁止) | 6ヶ月以下の懲役または10万円以下の罰金 |
アサリ(無許可採捕) | 100万円以下の罰金 |
実例: 浜名湖でサザエ10個を自己消費目的で採取した事例では、略式起訴で罰金10万円、公務員の場合は減給2ヶ月の懲戒処分となりました。
1-3. 禁止されている漁法・道具
以下の方法での採捕は法律で禁止されています。
禁止事項:
- アクアラングなど潜水器を使った採捕
- 水中眼鏡を使ったやす漁
- 爆発物・有毒物の使用
- 幅15cmを超えるクマデやシャベルの使用
罰則:
- 潜水器使用:6ヶ月以下の懲役または10万円以下の罰金
- 爆発物・有毒物:3年以下の懲役または200万円以下の罰金
- 幅15cm超のクマデ:1万円未満の科料
2. 知っておくべき法的規制
2-1. 遊漁券(入漁券)は必要?
浜名湖では基本的に遊漁券は不要です。
一般的な海釣りは自由に楽しめますが、漁業権対象種の採捕は原則禁止されています。ただし、河口部や流入河川での釣りには各漁協の遊漁券が必要な場合があるため、事前確認をおすすめします。
2-2. 禁漁期間を守る
浜名湖では魚種ごとに禁漁期間が設定されています。
魚種 | 禁漁期間 |
---|---|
アユ(浜名湖) | 10月1日~翌年3月31日 |
イセエビ | 5月15日~9月15日 |
シラス | 1月15日~3月20日 |
サクラエビ | 6月11日~9月30日 |
ボラ(当歳魚) | 1月1日~7月31日 |
テングサ | 11月1日~翌年3月31日 |
違反した場合:6ヶ月以下の懲役または10万円以下の罰金
2-3. サイズ制限を守る
規定サイズ以下の魚は持ち帰れません。必ずリリースしてください。
魚種 | サイズ制限 |
---|---|
アサリ | 殻長2cm以下は禁止 |
イセエビ | 全長13cm以下は禁止 |
ウナギ | 全長13cm以下は禁止 |
ブリ | 全長15cm以下は禁止 |
サザエ | 殻蓋の径3cm以下は禁止 |
違反した場合:6ヶ月以下の懲役または10万円以下の罰金
2-4. 潮干狩りのルール(2023年9月1日以降)
浜名湖の観光潮干狩りは2024年で6年連続中止となっていますが、個人での採捕には以下のルールがあります。
- 採捕期間:3月1日~8月31日のみ(9月1日~2月末は禁止)
- 採捕量:1日一人あたり2kgまで
- 採捕区域:干潮時の水際から沖合5mまでの範囲のみ
- 使用漁具:幅15cm以下のクマデやシャベルのみ
- ハマグリ:全面的に採捕禁止
2-5. 外来魚の扱い
ブラックバス(オオクチバス、コクチバス)とブルーギルは特定外来生物です。浜名湖内は汽水のため生息は確認されてないので釣れる可能性はないでしょう。しかし知識として知っておくべきです。
禁止事項:
- 飼育、運搬、保管
- 他の水域への放流
罰則:
- 個人:3年以下の懲役または300万円以下の罰金
- 法人:1億円以下の罰金
静岡県では現時点でリリース禁止の指示は出されていませんが、釣り上げた外来魚は再放流せず持ち帰って適切に処理することが推奨されます。
3. 基本的な釣りマナー
3-1. ゴミは必ず持ち帰る
舞阪港側が釣り禁止になった最大の原因はゴミの放置です。
放置されているゴミの例:
- 仕掛け・ルアー・エサの袋
- 空き缶・空き瓶
- 使用済みライン(野生動物が誤飲する危険)
- 針付きのサビキ仕掛け
- コンビニ弁当の空き容器
- 排泄物(裏弁天の鰻観音付近で問題化)
必ず守ること:
- すべてのゴミを持ち帰る
- 使用済みのライン・針・ワームは特に注意
- 携帯灰皿を持参する
- トイレを利用する
ゴミ問題が続くと釣り場が全面禁止になります。次はあなたの好きな釣り場かもしれません。
3-2. 駐車マナーを守る
舞阪漁港周辺には駐車スペースがなく、路上駐車は絶対禁止です。近隣には弁天島海浜公園と表浜駐車場があるので利用しましょう。
違反すると:
- 通報されて違反切符を切られる
- 釣り禁止エリアになる原因となる
利用すべき駐車場:
- 弁天島海浜公園の駐車場(有料)
- 浜松市舞阪表浜駐車場(有料)
- 新居弁天海釣公園:400円/24時間(最初の30分無料)
駐車料金を惜しんで路上駐車すると、結果的に釣り場そのものが失われます。全国どこでも港内エリアは基本的に「関係者以外立入禁止」です。許可なく入った場合は不法侵入で通報される可能性があることを忘れないように。
3-3. 先行者を尊重する
先行者優先の原則を守りましょう。
守るべきマナー:
- 挨拶は基本(「こんにちは」「おはようございます」)
- 「隣いいですか?」と一声かける
- 適切な間隔を空ける(最低でも数メートル)
- 他人の道具をまたぐときは声をかける
- 釣法の違いを尊重する(ルアー、投げ釣り、サビキなど)
- 道具はコンパクトに配置する
最近の問題: 前日19時頃から場所取りして朝まで死守する人が増加しており、トラブルの原因になっています。
3-4. 夜釣りでの騒音対策
近隣住民への迷惑行為が問題となっています。
避けるべき行為:
- 集団での大声での会話
- 車のエンジン音・ドアの開閉音
- 深夜の車のライトで住宅を照らす
住民からの苦情で釣り禁止になる可能性があるため、夜釣りでは特に静かに行動しましょう。
3-5. ライフジャケットを着用する
小型船舶では法的義務(平成30年2月1日施行)ですが、陸からの釣りでも強く推奨されます。
データ: ライフジャケット着用者の生存率は非着用者の約2倍
特に子供連れの場合は必須です。堤防・護岸からの釣りでも着用を推奨します。
3-6. 釣った魚の正しい扱い
外来魚:
- ブラックバス、ブルーギルは再放流せず持ち帰って処理
サイズ制限以下・禁漁期間中の魚:
- 必ずリリースする
外道(目的外の魚):
- 陸に放り投げて放置しない
- 優しく針を外して海に返す
3-7. 地元住民・漁業者への配慮
絶対にやってはいけないこと:
- 私有地への無断立ち入り
- 漁業施設や設備への干渉
- 養殖網の上を歩く・破る
- 船を勝手に触る
- 漁具に干渉する
錨瀬・弁天鳥居付近のアサリ養殖エリア(青い網)は絶対に踏んだり破いたりしないでください。漁業妨害として訴えられる可能性があります。
4. 立入禁止区域と自粛エリア
4-1. 完全禁止エリア
今切口周辺1,400m範囲:完全禁止(前述)
4-2. 釣り自粛エリア
以下のエリアは漁協から釣り自粛の要請が出ています。
- 錨瀬・弁天鳥居付近のアサリ養殖エリア(青い網)
- 吉田・重須・遠浅漁港付近
- 大崎・中山・村櫛などの漁業者の船着き場
- C型ドック、漁業施設周辺
- 舞阪漁港、新居漁港の貯木付近
- 赤灯台・白灯台付近(漁船の通行妨害防止)
近年の問題: 浜名湖フラットフィッシングの人気上昇で釣り人が増加し、自粛エリアでの釣りが多発。漁協から多数の苦情が寄せられています。
5. 施設別のルール
5-1. 新居弁天海釣公園
基本情報:
- 所在地:静岡県湖西市新居町新居官有無番地
- 駐車場:400円/24時間(最初の30分無料)
- 施設:T字型堤防5基、トイレ・洗い場完備
今切ショップ(公園内釣具店):
- 平日:8:00~16:00
- 土日祝:6:30~16:00(または17:00)
- 電話:053-594-8889
- レンタル釣具、餌・釣具販売、軽食あり
ルール:
- ペット同伴可能(マナー厳守)
- ライフジャケット着用推奨
- 台風等悪天候時は駐車場閉鎖の場合あり
5-2. 浜名湖フィッシングリゾート(管理釣り場)
基本情報:
- 営業時間:7:00~17:00
- 定休日:金曜日(祝日は営業)
共通レギュレーション:
持ち込み禁止:
- クーラーボックス厳禁(場内持込完全禁止)
- ペットのキャビン内連れ込み禁止
喫煙ルール:
- 携帯灰皿なしの方は喫煙所以外禁煙
- くわえタバコでの釣り禁止
- 警告:「喫煙マナーの悪い方が多い場合、今後釣り場禁煙になる可能性があります」
禁止行為:
- 遊漁券購入前の荷物搬入・場所取り
- 釣り場移動時の荷物放置
- ゴミの放置
- リリース時の魚体保護違反(乾いた手で触る等)
ブラックバスポンド特別ルール:
- 全フックはバーブレス厳守
- 鉛製のシンカー・ショット・ジグヘッド使用禁止
- ラバーランディングネット携帯必須
6. 環境保護への配慮
6-1. 水質保全
浜名湖は水の入れ替わりに13.4日かかる汚染されやすい環境です。
守るべきルール:
- 水産動植物に有害な物を捨てない
- 釣り具・糸・針・ワームを含むすべてのゴミを持ち帰る
- 生活排水を減らす工夫
「浜名湖の水をきれいにする会」が1965年から活動を続けており、毎年6月第1日曜日に「浜名湖クリーン作戦」が実施されています。
6-2. 鉛製シンカーの問題
浜名湖フィッシングリゾートでは鉛製のシンカー・ショット・ジグヘッド類の使用が禁止されています。
理由:
- 鉛の水溶性毒性が高い
- 食物連鎖を通じて動物の体内に蓄積
- 底生生物に影響
推奨: タングステン素材や鉛フリー製品(「eマーク」認定製品)の使用
7. 安全管理
7-1. 危険な時間帯と気象条件
以下の条件では特に危険です。
- 悪天候時(強風、高波)
- 飲酒時
- 夜間の慣れない場所
- 潮の流れが速い時間帯
事故の実例: 2024年6月には浜名湖周辺で2件の水難事故が発生しました。静岡県では7~8月を「水難事故防止強化月間」と定めています。
7-2. 事故防止策
- 立入禁止区域を絶対に守る
- ライフジャケット着用
- 子どもから目を離さない
- 悪天候時・飲酒時は海に入らない
- 釣り場の柵の高さに注意
- 携帯電話を携行し、GPSをオンにしておく
7-3. 緊急時の連絡先
海上での緊急時:118番(海上保安庁)
- 海難事故、人身事故に遭遇・目撃した時
- 油の流出発見時
- 密漁・密輸・不審船発見時
- 「いつ」「どこで」「なにがあった」を落ち着いて通報
聴覚・発話障害のある方:NET118(事前登録制)
その他の連絡先:
- 浜名漁業協同組合(総務課):053-592-2911
- 公益財団法人 浜名湖総合環境財団:053-458-6043
- 静岡県水産資源課:054-221-2696
8. 初心者向けトラブル回避ガイド
8-1. 実際に起きたトラブル事例
ゴミ・魚の放置を注意したら逆ギレ 「お前らに関係ないやろ」と反論され、トラブルに
道具をまたいで通ろうとしたら脅迫 「○すぞボケ!」と威嚇された
場所取り争い 「仲間を呼ぶぞ」「俺の知り合いには~」と威嚇された
釣り禁止になった場所 舞阪港側、今切口の導流堤など
8-2. トラブル回避のコツ
基本的な心構え:
- 先行者優先の原則を守る
- 釣法の違いを尊重する
- 道具はコンパクトに配置
- 外道は優しく針を外して海に返す
- 子どもから目を離さない
危険な対応は避ける:
- 感情的になっている人には近づかない
- 暴力を振るわれそうなら場所を譲る
- 反社会的団体の可能性がある場合は警察に連絡
8-3. 初心者が絶対に覚えるべきこと
これをやったら地元の人に怒られる:
- 指定以外の場所に駐車
- ゴミを放置
- 立ち入り禁止エリアで釣り
- 漁業施設に触る・立ち入る
- 騒音を出す
これは違反で罰則あり:
- アワビ、ナマコ、ウナギ稚魚を採る(最大3,000万円)
- 今切口周辺1,400mで釣り(10万円以下)
- サイズ制限以下の魚を持ち帰る(10万円以下)
- 禁漁期間に対象魚を採る(10万円以下)
- 潜水器を使って採捕(10万円以下)
- 漁業権対象種を無許可で採る(100万円以下)
9. 罰則一覧表
違反内容 | 罰則 | 根拠法令 |
---|---|---|
特定水産動植物の無許可採捕 (アワビ、ナマコ、ウナギ稚魚) | 3年以下の懲役 または3,000万円以下の罰金 | 漁業法第189条 |
外来魚の他水域への放流 | 3年以下の懲役 または300万円以下の罰金(個人) 1億円以下の罰金(法人) | 外来生物法 |
爆発物・有毒物の使用 | 3年以下の懲役 または200万円以下の罰金 | 水産資源保護法第5条 |
漁業権侵害 | 100万円以下の罰金 | 漁業法第195条 |
禁止区域での採捕 禁漁期間中の採捕 サイズ制限違反 禁止漁法の使用 | 6ヶ月以下の懲役 または10万円以下の罰金 | 静岡県漁業調整規則第57条 |
幅15cm超のクマデ使用 | 1万円未満の科料 | 静岡県漁業調整規則第58条 |
10. まとめ
浜名湖での釣りは、ルールとマナーを守れば安全で楽しいレジャーです。しかし、「知らなかった」では済まされません。
最も重要な3つのポイント:
- ゴミは必ず持ち帰る
- 釣り場閉鎖の原因No.1
- 禁止エリア・禁止魚種を守る
- 最大3,000万円の罰金
- 地元住民・漁業者を尊重する
- マナー違反で釣り禁止になる
令和2年の改正漁業法により罰則が大幅強化されました。従来20万円以下だった罰金が100万円以下に引き上げられています。
地元ブロガーの警告通り、「揉める人がいるから、全面禁止にしてしまえということになる」のが現実です。
次はあなたの好きな釣り場が失われるかもしれません。ライフジャケットを着用し、先行者に挨拶し、環境に配慮した釣りを心がけることで、浜名湖の豊かな水産資源と釣り場を未来に残すことができます。
法令遵守とマナー徹底こそが、持続可能な釣り文化を守る唯一の方法です。
参考リンク
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