自分で釣ったシロギスを、その日のうちに調理する喜びは格別です。
スーパーで売っているキスとは比較にならない「フワフワ感」と、青ジャムシの臭みが全くない「純粋な甘み」。これが釣り人だけに許された最高の特権です。
私(さしし)が毎年夏に浜名湖でキスを釣りに行く理由は、単純に「釣りたての天ぷらが食べたいから」です。朝に釣ったキスを昼に揚げる。これ以上の贅沢はありません。
一匹一匹が小さくても、丁寧に捌くことで最高の夕食に変わります。
なぜ浜名湖のキスは美味しいのか
シロギスは全長15〜25cmの細長い白身魚で、特に夏の浜名湖産は鮮度と味の面で最高水準を誇ります。
理由はエサの質にあります。浜名湖の砂底に豊富に生息するアオイソメ・ゴカイなどの多毛類を主食とするキスは、そのうまみ成分が身に蓄積されています。
水温が高い夏(7〜9月)のキスは活発に動き回り、筋肉が適度に発達して食べ応えのある身質になります。
また、浜名湖の汽水環境が適度な塩分濃度を保つため、身の臭みが少なく、そのままの素材の味を楽しめます。
美味しさを決める:キスの下処理
釣り場での鮮度管理
釣ったキスは、クーラーボックスに氷と少量の海水を入れた「潮氷」で素早く締めましょう。
氷の上に置くだけでなく、氷に埋まるように入れることで均一に冷却できます。
帰宅後はできるだけ早く(当日中に)調理することが最高の味を引き出すコツです。
鱗の落とし方(重要!)
キスの鱗(うろこ)は細かく、特に背びれの付け根や腹周りに残りやすいです。
鱗が残っていると、天ぷらにした時に口当たりが非常に悪くなります。
包丁の背を使い、尾から頭方向に向けてしごくように落とします。水の中で指でなぞって確認するのがコツです。
基本の捌き方:「背開き」(天ぷら用)
キスを美しく揚げるためには「背開き」が基本です。
- ウロコを落とす:包丁の背で丁寧に、全身の鱗を取ります。
- 頭・内臓を取る:頭ごと内臓を引き抜きます。包丁でも、指でも取れます。
- 背から開く:背骨に沿って、尾の付け根まで包丁を入れ、パカッと開きます。
- 背骨を取る:指で背骨(中骨)を剥がすように取り除きます。この骨は「骨せんべい」に使うので捨てないでください。
三枚おろし(刺身・昆布締め用)
刺身や昆布締めにする場合は三枚おろしにします。
頭・内臓を取ったキスを、中骨に沿って片側ずつ刃を入れてフィレに切り分けます。
皮は刺身にする場合は引き(除去)、昆布締めにする場合はそのままでも美味しいです。
キスの絶品レシピ集
1. 王道!サクサクの「キスの天ぷら」
キスといえば天ぷら。これが一番の楽しみという釣り人が圧倒的に多い、不変のレシピです。
材料(4人分):キス 20〜30匹(背開き済)、薄力粉 少量、天ぷら衣(薄力粉100g・片栗粉20g・冷水150ml・卵黄1個)、揚げ油
作り方:
- 衣を作る:卵黄と冷水を混ぜてから、薄力粉・片栗粉を加えてさっくりと混ぜます。「混ぜすぎない」のが最大のコツ。ダマがあっても気にしない。氷を2〜3個入れると衣が冷えてよりサクサクになります。
- キスに打ち粉をする:背開きにしたキスに薄く薄力粉をまぶし、余分な粉をはたきます。
- 揚げる:170〜180℃の油に入れます。衣が固まって白っぽくなってきたら返し、合計で2〜3分揚げます。揚げすぎると身が硬くなるので注意。
- 盛り付け:天つゆ+大根おろし、または粗塩で食べます。
味わい: 揚げたてを塩で食べると、キスの繊細な甘みが爆発します。ぜひ揚げたてをその場で食べてください。
2. 釣り人の特権:「キスの昆布締め(お刺身)」
新鮮なキスが手に入る釣り人だからこそ楽しめる、特別なお刺身です。
材料:キス(三枚おろし・皮引き済)、昆布 1枚、酢 少量
作り方:
- 三枚おろしにしたキスの身に塩を振り、15分ほど置きます。出てきた水分を拭き取ります。
- 昆布を酢水で湿らせて柔らかくします。
- 昆布の間にキスの身を並べ、冷蔵庫で一晩(4〜8時間)寝かせます。
- 昆布の旨みが移り、プリプリの食感になった身は、ポン酢やわさび醤油でいただきます。
翌日が最高の食べ頃で、身がしっとりして旨みが凝縮されます。
3. 捨てたら勿体ない!「骨せんべい」
捌いた時に余った中骨は、最高のカルシウム補給源になります。
作り方:
- 中骨を乾いたキッチンペーパーで水気を取ります。
- 低温の油(150℃)でじっくり5分揚げます。
- 温度を190℃に上げて2分、2度揚げにします。
- 油を切って、熱いうちに塩を振ります。
ポテトチップスのようなサクサク食感で、ビールのおつまみとして最高です。これがあるだけで、おかずの品数が自然と増えます。
4. 夏の贅沢「キスの南蛮漬け」
たくさん釣れた時にまとめて作れる、保存食にもなる一品です。
材料:キス 15〜20匹(丸のまま)、玉ねぎ・にんじん・ピーマン 各適量、南蛮酢(酢100ml・醤油50ml・砂糖大さじ2・唐辛子1本)
作り方:
- キスを丸揚げ(片栗粉をまぶして170℃でじっくり揚げる)にします。
- 南蛮酢を合わせます。
- 揚げたてのキスを南蛮酢に漬け、薄切りにした野菜を加えます。
- 冷蔵庫で2時間以上休ませると味が馴染みます。
冷蔵庫で3日間保存できるため、まとめて釣れた日に作り置きしておくと便利です。
キスと合う食べ方の工夫
天ぷらを最後まで美味しく食べるコツ
天ぷらは時間が経つとサクサク感が失われます。
大人数で食べる時は「揚げながら食べる」スタイルにするのが正解です。一気に揚げて並べると後から食べる分が湿って残念になります。
お弁当に入れる場合は、完全に冷まして水蒸気が逃げてからラップしましょう。
少し残ったキスを活かすスープ
天ぷらにした後の骨や頭を、水から15分ほど煮出すと上品な白いスープが取れます。
塩・日本酒・薄口醤油で味付けし、三つ葉を散らすだけで、料亭のような「キスのお吸い物」になります。
まとめ:感謝して「一匹まるごと」いただく
キスの命を余すところなくいただく。それが釣り人の礼儀であり、一番の贅沢です。
身は天ぷら・刺身・南蛮漬けで、骨は骨せんべいで、頭はスープで。全てを余すことなく料理することで、釣りの感謝を食卓に表現できます。
7〜9月の最盛期に釣ったキスは、鮮度も味も最高です。ぜひ釣りたての天ぷらを家族や友人に振る舞ってください。
Tip
「鱗」の見落としに注意! 特に背びれの付け根や、腹周りの鱗は残りやすいです。 鱗が残っていると、天ぷらにした時に口当たりが非常に悪くなります。 水の中で指でなぞって確認するのがコツです。
