私(さしし)が初めてシーバスを持ち帰った夏の夜、「スズキの洗い」を作ってみました。
氷水の中で白くキュッと締まった身を、冷えた酢みそとともに食べたとき、これが「夏を代表する高級魚の味か」と確信しました。
シーバス(スズキ)は、出世魚の頂点に立つ日本の伝統的な高級白身魚です。
浜名湖の汽水域で育った個体は特に身が締まっており、鮮度が良ければ刺身でも洗いでも最高の一皿になります。
「スズキは臭い」と言われることもありますが、それは主に排水が多い都市河川や汚れた港湾の個体に限った話です。
浜名湖の清澄な汽水域で小魚・エビ・カニを食べて育ったシーバスは、まったく臭みのない上品な味わいを持ちます。
なぜ浜名湖のシーバスは美味しいのか
浜名湖のシーバスが美味しい理由は、豊富な餌と適度な塩分環境にあります。
海水と淡水が混ざる汽水域には、ハク(ボラの稚魚)・イワシ・エビ・カニ・ゴカイなどが豊富に生息しており、シーバスはこれらを活発に捕食します。
多様な栄養源を食べることで、身に旨み成分のグルタミン酸とイノシン酸がバランスよく蓄積されます。
また、季節によって味が大きく変わるのもシーバスの特徴です。
夏は脂が少なく身が締まっているため「洗い」が最高で、秋はコノシロ・イワシなどの脂の乗ったベイトを追いかけた後のため旨みが増し、刺身でも絶品になります。
冬の「落ちシーバス」は産卵後で脂が落ちますが、ムニエルや鍋物にすると身の甘みが際立ちます。
身の品質を左右する:シーバスの下処理
血抜きと神経締め(最重要)
シーバスは身が痛みやすいため、釣れた直後に必ず血抜きをします。
エラ蓋を開けて片側のエラを包丁またはハサミで切断し、バケツの海水に5〜10分浸けて血を出します。
40cm以上の大型の場合は、さらに神経締めを行うと身の透明感と弾力が劇的に変わります。
尾の付け根に切れ目を入れ、背骨の中央にある神経管に細いワイヤーを通して脊髄を破壊します。
ウロコの徹底処理
シーバスのウロコは硬く、細かいウロコが全体に密集しています。
ウロコ取りで全体のウロコを丁寧に落とす必要があります。
特に頭部近くと腹側、尾近くはウロコが残りやすいため念入りに取り除きます。
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マダイなどの硬いウロコも飛び散らずに綺麗に取れます。
内臓の処理
お腹を開いて内臓を取り出す際、腹の中の血合い(背骨沿いの血管)を歯ブラシで丁寧に洗い流すことが生臭さを防ぐ最大のコツです。
鮮度が良ければ「胃袋」をさっと湯通ししてポン酢で食べると、コリコリした珍味として楽しめます。
内臓を傷つけないように注意しながら取り出し、流水でお腹の中を丁寧に洗います。
シーバスの絶品レシピ集
1. 夏の極み「スズキの洗い(あらい)」
夏のシーバス料理の王道にして、最高の食べ方です。
高タンパクで低脂肪の夏の身が、氷水でキュッと締まることで独特の食感が生まれます。
材料(2人分):シーバス(三枚おろし・皮引き済)、氷水(薄い塩水)、酢みそまたはポン酢、もみじおろし
作り方:
- 薄く切る:三枚おろしにして皮を引いた身を、2〜3mm厚に薄く引き切りにします。
- 氷水で洗う:ボウルに氷と冷水(塩を少量加えると旨みが逃げにくい)を入れ、切った身をさっと振り洗いします。身が白く「ちりちり」と縮んだら30〜60秒で引き上げます。
- 水気を取る:引き上げた身をキッチンペーパーでしっかり水気を取ります。
- 盛り付け:氷の上に盛り付け、酢みそ(すみそ)または梅肉ポン酢で食べます。
ポイント: 酢みそとの相性が抜群ですが、シーバスの甘みを直接味わいたいなら塩とレモンだけでもすっきり美味しいです。
2. 洋風の傑作「シーバスのバタームニエル」
ふっくらとした白身にバターとニンニクの香りが絡む、シンプルながら奥深い一品です。
材料(2人分):シーバス(三枚おろし)2切れ、塩・コショウ、薄力粉、バター 15g、オリーブオイル 大さじ1、ニンニク 1片(スライス)、レモン、パセリ(みじん切り)
作り方:
- 下準備:身に塩・コショウをして15分置き、出てきた水分を丁寧に拭き取ります。
- 皮側に粉をまぶす:皮側に薄力粉を軽くまぶし、余分な粉を落とします。
- 皮目から焼く:フライパンにオリーブオイルとニンニクを入れ中火で熱し、皮目を下にして入れます。フライ返しで軽く押さえながら3〜4分焼きます。
- バターで仕上げる:皮目がパリッとしたら裏返し、バターを加えてスプーンで身に回し掛けしながら1〜2分仕上げます。
- 盛り付け:皮目を上にして盛り付け、レモンを絞ってパセリを散らします。
バリエーション: ソースはケイパーソース(バター・白ワイン・ケイパー・レモン汁)にすると、より本格的なムニエルになります。
3. 豪快!「シーバスのアクアパッツァ」
セイゴ・フッコクラス(30〜50cm)が釣れたときに挑戦したい、見た目も華やかな豪快レシピです。
フライパン一つで作れる手軽さながら、食卓に並べた瞬間に歓声が上がります。
材料(2〜3人分):シーバス(内臓除去済み・ウロコなし)1匹、アサリ 200g、プチトマト 8個、ニンニク 2片、ブラックオリーブ 適量、白ワイン 100ml、水 150ml、オリーブオイル 大さじ2、塩・コショウ、パセリ
作り方:
- シーバスに焼き目をつける:シーバス全体に塩・コショウし、大きなフライパンにオリーブオイルを熱して両面に焼き目をつけます(各面2〜3分)。
- 具材を加える:砂抜き済みのアサリ・プチトマト・スライスしたニンニク・オリーブを加えます。
- 蒸し煮にする:白ワインと水を注ぎ、蓋をして中火で10〜12分蒸し煮にします。
- 仕上げ:アサリの殻が開いたら完成。スープにシーバスとアサリの旨みが凝縮されています。パセリを散らし、バゲットを添えてスープをすくいながら食べます。
4. シンプル最高「シーバスの塩焼き・刺身」
秋の脂の乗ったシーバスは、シンプルな塩焼きや刺身でも絶品です。
塩焼き: 両面に粗塩を振って20分置き、水気を拭き取ってからグリルで焼きます。皮目がパリッと焼けて香ばしく、骨際の「カマ」の部分が特に美味しいです。
刺身(秋〜冬): 三枚おろしにして皮を引いた身を、斜めに薄く切ります。わさび醤油で、または昆布締めにして翌日食べるとさらに旨みが増します。
腹と背の使い分けで一匹を最大限に楽しむ
シーバスは部位によって味と食感が大きく異なります。
腹側(ハラミ)は脂が乗っていて刺身のトロに相当します。洗いや刺身で食べると、口の中でとろける甘みが楽しめます。
背側は身が締まっていて火を通しても崩れにくいため、ムニエルやアクアパッツァ・塩焼きに向いています。
一匹から腹側を刺身・背側をムニエルと使い分けると、一匹で二種類の料理が楽しめます。
まとめ:ターゲットを「食」で完結させる喜び
シーバスは釣って楽しく、食べて美味しい最高のターゲットです。
夏のシーバスは洗い、秋の脂乗りシーバスは刺身や塩焼き、冬はムニエルやアクアパッツァと、季節ごとに違う楽しみ方ができます。
適切な血抜きと下処理さえ丁寧に行えば、浜名湖のシーバスは高級料理店で出てくるスズキ料理に引けを取りません。
Tip
「腹」と「背」の使い分けが上級者の証 シーバスの腹側(ハラミ)は脂が乗ってお刺身のトロに相当します。 背側は身が締まっていて、焼き物やムニエルに向いています。 一匹の中で部位ごとに使い分けると、さらに通な楽しみ方ができます。
