私(さしし)が初めて「寒グレ」を釣ったのは、真冬の2月でした。
エサ取りの少ない厳寒期に苦労してやっと釣り上げた40cmのメジナを、その夜に「洗い」と「ポワレ」の二種類で食べたとき、想像をはるかに超える美味しさに驚きました。
「メジナは磯臭い」という先入観は、正しい下処理をすれば完全に消えることを体感した夜でした。
下処理さえしっかり行えば、メジナは真鯛にも劣らない、深みのある旨みと上品な白身を持つ最高級の魚です。
なぜ浜名湖のメジナは美味しいのか
浜名湖のメジナが美味しい理由は、今切口(いまぎりぐち)周辺の豊かな磯の環境にあります。
今切口の消波ブロックや岩礁には、フジツボ・カキ・イソガニ・海藻類が密集しており、メジナはこれらを活発に食べて育ちます。
これらの餌に含まれる有機物が、メジナの身に旨み成分として蓄積されます。
また、水温が下がる冬(12〜2月)の「寒グレ」は、一年で最も美味しい時期です。
水温低下に備えて脂肪を蓄えた個体は、身に脂が行き渡り、甘みと旨みが最高潮に達します。
さらに、冬は植物プランクトンの少ない時期のため、消化管が比較的清潔な状態を保ちやすく、磯臭さが出にくい条件が整います。
夏〜秋のメジナは海藻を多く食べているため内臓が独特の匂いを持ちやすく、冬のメジナとは別物の扱いが必要です。
味を劇的に変える「下処理」の徹底ガイド
釣り場での即時血抜き(最重要)
メジナは釣れた直後に必ずエラを切って血抜きをします。
エラ蓋を開けて片側のエラを包丁またはハサミで切断し、バケツの海水に5〜10分浸けて血を出します。
血が回ると、身に鉄臭さと磯臭さが移るため、この工程がメジナの美味しさを決定する最重要ポイントです。
内臓を釣り場で取り出す
できれば釣り場で内臓を処理することを強くすすめます。
お腹に切れ目を入れて内臓を取り出し、海水でお腹の中を洗い流します。
磯臭さの大部分は内臓、特に消化管の内容物から発生します。
釣り場での内臓処理は、持ち帰り後の仕上がりを大きく変える重要な一手間です。
黒い膜の除去
帰宅後にお腹を丁寧に処理する際、腹腔の内壁に張り付いた黒い薄膜を必ず取り除きます。
この膜も臭みの原因の一つで、指や歯ブラシで丁寧に剥がして流水で洗い流します。
血合い(背骨沿いの血管)も歯ブラシでしっかり洗い流します。
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メジナの絶品レシピ集
1. 弾力と甘みを堪能「メジナの洗い(あらい)」
冬の寒グレなら、これが最高の食べ方です。
氷水で身を締めることで余分な脂が落ち、食感がキュッと締まります。
材料(2人分):メジナ(三枚おろし・皮引き済)、氷水(薄い塩水)、ポン酢、もみじおろし(大根おろし・一味唐辛子)
作り方:
- 刺身に切る:三枚おろしにして皮を引いた身を、2〜3mm厚に薄く引き切りにします。メジナの皮は厚くて独特の風味があるため、しっかり皮を引くことが重要です。
- 氷水で洗う:ボウルに氷と冷水(軽く塩を加える)を入れ、切った身をさっと振り洗いします。身が白くなり「ちりちり」と縮んだら(30秒〜1分)すぐに引き上げます。
- 水気を取る:引き上げた身をキッチンペーパーでしっかり水気を取ります。
- 盛り付け:氷の上に盛り付け、ポン酢ともみじおろしを添えていただきます。
ポイント: 洗いは氷水に入れすぎると身が硬くなりすぎます。ちりちりと白くなり始めたらすぐに引き上げるのがコツです。
2. 皮パリ絶品「メジナのポワレ」
しっかりした白身のメジナは、洋風の調理にも非常に向いています。
皮がパリパリに仕上がるポワレは、メジナの持つ旨みを存分に引き立てます。
材料(2人分):メジナ(三枚おろし)2切れ、塩・コショウ、薄力粉、オリーブオイル 大さじ2、バター 10g、ニンニク 1片、レモン
タルタルソース(お好みで):マヨネーズ 大さじ3、刻みピクルス 大さじ1、刻みタマネギ 大さじ1、ゆで卵(みじん切り)半個
作り方:
- 下準備:三枚おろしの身に塩・コショウをして10〜15分置き、出てきた水分をキッチンペーパーで丁寧に拭き取ります。
- 皮目に粉をまぶす:皮側に薄力粉を軽くまぶします(余分な粉は落とす)。粉をつけることで皮がパリパリに仕上がります。
- 皮目から焼く:フライパンにオリーブオイルとニンニクを入れ中火で熱し、皮目を下にして入れます。フライ返しで軽く押さえながら3〜4分焼きます。
- バターで仕上げる:皮目がパリッと固まったら裏返し、バターを加えてスプーンで身に回し掛けしながら1〜2分仕上げます。
- 盛り付け:皮目を上にして盛り付け、レモンを絞っていただきます。
バリエーション: バター醤油ソース(バター・醤油・みりんを1:1:0.5で合わせる)をかけると和風テイストになります。
3. 旨みが溶け出す「メジナの潮汁(うしおじる)」
アラから取れる出汁は、メジナのエキスが凝縮した格別の一杯です。
材料:メジナのアラ(骨・頭)、水 600ml、酒 大さじ2、塩 小さじ1、薄口醤油 少量、生姜 薄切り、三つ葉
作り方:
- 霜降り:アラに熱湯をかけ、表面が白くなったら冷水で洗います。鱗や血を丁寧に落とします。
- 出汁を取る:水・酒・生姜を入れた鍋にアラを加え、弱火で20〜25分煮出します。出てくるアクをこまめに取り除くことで、透き通った澄んだ汁になります。
- 塩で調味:出汁をこして鍋に戻し、塩と薄口醤油で味を調えます。
- 仕上げ:椀に盛り、三つ葉を添えて完成。生姜を少量加えると体が温まります。
メジナのアラからは白い濁りのない上品な出汁が出て、冬の冷えた体に染み渡る最高のスープになります。
4. 珍品おつまみ「皮の湯引き」
メジナの厚い皮は、捨てずに活用しましょう。
材料:メジナの皮、ポン酢、もみじおろし
作り方:
- 三枚おろしで取り除いた皮を、食べやすい長さに切ります。
- サッと熱湯にくぐらせる:10〜15秒だけお湯に通し(くぐらせる程度)、すぐに氷水で冷やします。
- 水気を拭き取り、ポン酢ともみじおろしで和えます。
コラーゲンたっぷりのプルプルとした食感は、知っている人だけが楽しめる隠れた珍味です。
刺身・洗い・ポワレを作った後に、この皮料理まで食べると一匹を完全に食べ尽くした満足感があります。
磯臭さが残った時の対処法
下処理を丁寧にしてもわずかに磯臭さが気になる場合は、以下の方法を試してください。
塩水に浸ける:三枚おろしにした身を、海水程度の濃度(3%塩水)に30分浸けます。
昆布締めにする:身を昆布で挟んで冷蔵庫で4〜8時間寝かせると、昆布の旨みが移り磯臭さが和らぎます。
酒と塩で処置:酒を身全体に振りかけて5分置き、水気を拭き取ります。
まとめ:冬の海からの贈り物を味わう
「メジナは苦手」という方にこそ、冬の寒グレを正しく調理して食べてみてほしいです。
12〜2月の寒グレを完璧な下処理で仕上げた洗いやポワレは、高級料亭の一皿に匹敵する美味しさです。
一匹のメジナから身・皮・アラまで全て使い切ることで、長い冬の堤防で粘り続けた釣果が最大限に報われます。
Tip
「皮の湯引き」は知る人ぞ知る珍味! 取り除いた厚い皮も、サッと熱湯をくぐらせて氷水で締め、ポン酢で和えれば「皮の湯引き」として最高の一品になります。 コラーゲンたっぷりでプルプルの食感は、スーパーでは絶対に味わえない釣り人だけの特権です。
